ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

 夏休みの宿題をぎりぎりになって片づける子どもは、そのまま、徹夜でレポートを書く大学生になります。ノートパソコンの画面と対峙し、窓の外が白みはじめるのを椅子の上で見届けることになると予期しながら、この感じははじめてじゃない、と懐かしさをおぼえました。

 読書感想文の推敲に1週間を費やすような偏執狂じみた中学生は、そのまま、ことばにねちっこいまなざしを注ぐ文学部生になります。性癖は治りませんから、解放できるところで過ごしています。

 いいものが書けたとまれに思うときには、たとえば、書かれた4000字の背後に、書かれなかった20000字や30000字が必ずあります。ノートの見開きいっぱいに散らかった青インクであったり、ためらいののち、バックスペースキーにさらわれた明朝体であったり、そのかたちはさまざまです。頭のなかで繰り返された「なぜ?」のように、かたちのないこともあります。

 反故になった、書かれなかったことばが募るほど、書かれた文章はおもしろくなります。ことばの上では、思いきり捨てる贅沢をしたいのです。