ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

持たざるもの

 手持ちの服が少ないため、私の暦に衣替えはありません。狭いクローゼットに、薄手のブラウスも、スーツもドレスも、ブルゾンもチェスターコートも、いっしょくたに吊るしてあります。四季を一望に収められるつくりです。制服は手元に残っていません。膝に穴の開いたジャージはまだ現役です。着なくなったら、きっとその日に処分します。とりあえず取っておくということができないのです。

 持たないことを好むのは、おそらく幼少期に有していた収集癖の反動です。割り箸の袋でつくった箸置き、飛行機の座席に備えつけられたエチケット袋、サイズの合わないイヤーピースといったさまざまながらくたを、嬉々として引き出しにしまいこんでいました。ある年、なにも置かれていない床のきもちよさに目覚めて、部屋からみんな追い出しました。仲間由紀恵の写っていた記事の切り抜きだけは、捨てなくてもよかったとときどき思い返します。

 ランドセルも卒業アルバムも手離しました。切り抜きのほかに、捨てて後悔したものはなにひとつありません。手に取ってときめくものだけが持ち物です。