ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

おかいもの的倒錯

 ひとに一目惚れをしたことはありませんが、ものにはよくします。今度の相手はビニール製のポーチでした。彩度を落としたトリコロールカラーみたいな配色、太めのペンで描いたイラストがかもし出す、すっきりしているのにあたたかい雰囲気、右上にいるハイヒールを履いた脚のかたち、なにもかもがタイプの子です。小学生がプールに持って行くかばんと同じにおいがするところも気に入っています。

 なんとしても連れて帰りたく、口実を設けようと頭をひねりました。電子辞書のケースを探しているところだったと閃き、重ねてみると幸いにもちょうどよい大きさだったので、買うことができました。こういうときだけは、運命ということばを安易に使ってよい気がします。

 「発明は必要の母」を体現するかのように欲望が先走るのを、わかっていて止められません。ポーチはほどよく大きな買い物なので、本気の恋でなければ歯止めがかかりますが、送るあてのないポストカードや便箋など、衝動的に買ってしまいます。だれになにを書くかは、買ったあとで考えます。ものには順序があるというけれど、そのきまりを破ったらしあわせになれないわけではないとも思うのです。