ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

おいしいね

 少し前に、両親が銀婚式を迎えました。高額な品物は受け取ってくれない控えめなふたりに、さりげないプレゼントにちょうどよいものを探しに行ったところ、駅ビルも百貨店も臨時休業日らしく閉まっています。あてもなく歩きながら、コーヒーメーカーを買ってはしゃいでいたのを思い出して、近くのカフェに入りました。コーヒー豆を贈ると決めるまでには、相当悩みました。地味だよな、いや、好きなものがもともと派手じゃない。でも記念日らしくないよな、いいんだよ、なんでもない日が続いていくことをお祝いするんだから。

 店員さんを困らせながら長いことしゃべって、一緒に選んでもらいました。普段からコーヒーを飲まない私には、味わいを言語化することも、説明から味わいを想像することも難しいのです。どうしよう、ぜんぶおいしそうだ、と迷ったあげく、じゃあどれでも間違いないなと、おすすめしてもらったものを買いました。

 ことばにしがたいものを、なんとかことばにしようとして、やっぱりできないことばかりです。缶チューハイしか知らなかったころ、ジャックダニエルをはじめてひとくち飲んで、いつになく心地よくしびれながら、言えたのは「おいしいお酒はおいしいね」だけでした。