ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

知らないくせに

 ろくに知りもしない女によく熱を上げられるな、とおのれを冷ややかに眺めたのち、よく知らないから手放しで礼讃するのだと気づき、気づいてもなお私は壇蜜が大好きなのでした。ただ壇蜜が好きなのであって、齋藤支靜加さんを愛してはいないのです。フリーに憧れているけれど、マイケル・ピーター・バルザリーさんのことはなにも知らないのと同じです。

 知りたがりの子どもでした。週刊誌の三文小説を開いて、読めない漢字があると祖母にたずねていました。「淫ら」の読みだけは教えてもらえませんでした。はぐらかされるからよけいに気になって、活字のかたちが頭にこびりついたものでした。わからないことばは、欲深い子どもにとっては甘くも苛立たしい距離にある獲物です。こっそりと電子辞書を引いてみたけれど、意味はわからずじまいでした。数年が経ち、なんとなくわかるようになったころ、秘密を発いた悔恨とともに、知らされないことは強いて知りたがらないことを覚えました。

 たいして知らないのがちょうどよいときも、物足りないときもあります。知るほどもっと知りたくなる人を見つけてしまったなら、目を離してはいけません。