ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

スマートであれ

 あらゆるしぐさにそれぞれのもつ美しさを見出せたらよいけれど、スマートフォンを操作する人の姿には、魅力を感じたことが残念ながらありません。うつむく、指をすべらせる、まばたきを忘れる、ひとつずつの所作を取り出してみればささやかなものであるのに、すべてをひとところに集めたとたんに、なんとなく窮屈に映ります。小さな画面を前にして締まりのなくなったさまを見せたくはなく、帰りの電車を調べるにも、いけないものをのぞいているわけでもないのに急いでしまいます。

 待ち合わせは静かなる闘いのときです。相手がやってくるまで、連絡がないか気を配らなくてはならない。したがってスマートフォンは手のなかにある。しかしながら、今日はじめて会う瞬間に、そいつはふさわしくない、視界に入れたくはない。こちらが先に見つけて歩み寄って、できることならびっくりさせたい。LINEを確認しているうちに肩を叩かれなどしたら、私の負けです。それはだれの勝ちをも意味しません。私が私に課した決めごとです。

 私はスマートフォンがこわいのだと思います。たとえば雨天の往来であろうとかまわず目を奪って、情感までひどく乾燥させていく機械の誘いかけがこわいのです。