ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

水底から

 仲間からひとり遊離したものを浮いていると形容するのは、巧みではありながら万能ではありません。ひっそりと沈むやつがここにいます。

 自分の声は沈殿していると、女の子と話していて感じることがあります。透きとおっていたり、不機嫌だったり、熱っぽかったりする、多彩な高い声を聞き、いずれにしても私がきまって想起するのは、かわいらしい手毬麩です。汁椀の底から見上げる気分でしゃべります。しゃべればしゃべるほど、水面までの距離がはっきりして、上のほうにはどうがんばっても行けないことも明らかになってきます。

 自分の声の、中途半端な低さも、すぐにかすれるところも気に入りません。大学生にもなって、出席を取られるときすこし緊張します。あたたまりきらない喉からしぼり出す「はい」のきまらないこと。

 もっと魅力ある声を持っていたなら、おしゃべりが好きだったかもしれない。明るくも美しくも力強くもないこの声を、好きだと言う人もいて、そんなとき私は汁椀を抜け出して屈託なくしゃべるのです。だからこのままでもべつにかまわないような気もしています。