ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

自分探さない

 自分の書いたものが他人のことばのように受け止められるのというのはありふれた現象だけれど、それにしてもこれには驚かされた、と拾い上げた紙きれの文字をしみじみ読み直してから、住所の印刷されたダイレクトメールより入念にちぎって捨てました。「私はレズビアンなのでしょうか?」と、たしかにそれは私の筆跡でした。書きことばだけ敬体になる癖もそのままです。

 そういえば中学生のころ、家族で旅行した夜に、みんなが寝静まってからいろいろ考えたのでした。覚えているのはそれだけで、ほかには、どこに連れて行ってもらったときのことなのかも、なにを考えたかのかも忘れてしまいました。

 忘れてしまっても、書かれたものは残っています。これこそが書くことの効能です。離れたところからあらためて眺めなおせることと、かたちにして残せること。あのときの私は、書いて落ち着いたから記憶にひっかかっていることが少なく、書いてもわからないままだったからメモを持ち帰ったのでしょう。いまとなっては、お出かけに悩みは置いて行けばよかったのにとだけ思います。だいじな答えは旅よりふだんの暮らしのなかに求めるものだ、と二十歳を過ぎた私から教えてあげたいな。